堕天使のパスポート

早く寝なきゃいけない夜に限って、たまたまつけたテレビの映画に釘づけになるのはなぜだろう。

昨夜もそんな夜だった。

こういうことには、鼻が利くというか一瞬でこの映画は只者ではないと引き込まれ、もっていかれた。
途中から観たにもかかわらず、映像からにじみ出る凄味のような緊張感は、どこから生まれるのか。やはり脚本か。俳優の名演技によるものなのか。

後で調べてみると案の定、アメリカとイギリスでこの映画は、両国のアカデミー賞の脚本賞を受賞していた。主演は、「アミスタッド」のキウェテル・イジョフォーと「アメリ」のオドレイ・トトゥ。

解説には「ロンドンにおける移民たちの置かれたシビアな現実を背景に、絶望からの脱出を願い危険な選択に望みを懸ける一人のトルコ移民女性と彼女を見守るアフリカ人男性の運命をスリリングに描いたヒューマン・サスペンス」と書かれていたが、このアフリカ人が途中からスーパーマンと変身していくと並行して二人は惹かれあってゆく。同時にラブストーリーでもあるわけだ。

「アメリ」の時とは別人のオドレイ・トトゥの演技もさることながら、イジョフォーの鬼気迫る顔の表情や眼光の鋭さにしびれた。彼には、どうしてもつらぬかねばならない訳があり、それゆえに非情なまでの鉄の意志の強さを最後まで崩さない。

物語は、トルコからの亡命者とナイジェリアからの密入国者を主人公に、イギリスの抱えた闇の部分、底辺の労働者階級よりさらに下の不法滞在者や不法労働者の生き様がリアルに描きこまれている。そして、物語はある種の痛快さとほろ苦い歯がゆさのうちに幕を閉じる。
自分がイジョフォーだったなら、最後にいっしょに飛行機に乗っただろう、きっと・・。

いつも、意志の弱さゆえに夢をかなえられずにいるそこの君、自分に負けそうになったときぜひ観ていただきたい。

ああ、また寝不足である。
明日は、絶対に早く起きねばならないというのに・・。

■ 堕天使のパスポート(2002)
DIRTY PRETTY THINGS

ジャンル 映画
上映時間 97分
製作国 イギリス
公開情報 劇場公開(東芝エンタテインメント)
初公開年月 2004/08/07
ジャンル サスペンス/ドラマ
映倫 PG-12

「翼を手に入れて 幸せになりたい

美しき街、ロンドンの知られざる傷。移民たちはたった一つの希望を求めて、命懸けの取引をする――。」