あと何回うまい飯が食えるだろう。
最後の晩餐は、まだもう少し先だろうが。味ももちろんだが、楽しい仲間とアホな話をしながら食べるという条件付き。最近、記憶に残ったものを3つ書いておこう。
先日、後輩のY.Hくんと食べた鮨。いつもの苦楽園、鮨千で食べたトロのあぶりおろし和え。
マグロは個人的に赤身の方が、滋養が多いと思うので好きなんですが、こいつはうまかった。余計な脂が落ちて、辛み大根と葉わさびのちゃんちゃん漬けが舌に適度な刺激と奥行きを醸し出す。もう一つ、煮アワビのにぎり。これはたまたまその日だけありました。水槽には生きたアワビがいた。生もうまいが、細工してあっても女王は女王。
ハイテンポでの4ビート。スネアドラムにハイハットの鋭い刻みが入り、クラッシュシンバルが耳を劈く感じと言えば分ってもらえるだろうか。わかる人にはわかる。あぶりの鰻も絶品だが、その夜は鮪に軍配が上がった。ジャック・リジョネット・トリオのライブを堪能させていただいた気分。飛び入りで サラ・ヴォーンが唄ってくれた。
芦屋のサロンの斜め向かい、3馬力2/1で友人のサロンオーナーと食べたタンのユッケと牛ロース。ここんちの肉は、かなりよい。タンユッケは、普通のユッケよりも歯ごたえがかなりある。たれが甘くて絶妙。
ロースに関しては何も言うまい。備長炭に身を清められたそれは、ゆったりと流れるナイロン弦のアコーステックギターが奏でるリズムに、微妙にずれて、揺れるように囁くボッサノヴァの男性ボーカルのようだ。カルロス・ジョビンの歌声が頭の芯の部分を刺激するがごとく。
最後は、疲れて帰宅後、夕食に食べた銀鱈(ギンダラ)の西京漬け。これもうまかった。この日は、特別なことは何もないはずなのに好きなものが並んだ。よほど家人のご機嫌がよろしかったのであろう。土鍋で炊いた炊きたての白飯、たこわさび、春菊のサラダ、アサリの酒蒸し、そして銀だら。
まあ、これは個人的な趣味にはなるが、山下達郎の初期のアルバム、「SPACY」の最初の曲、「LOVE SPACE」みたいなものかしら。あくまで私にとってはだ。村上ポンタのきらびやかで力強いドラム、地を低空で飛ぶがごとくの細野晴臣のベース、メロディアスで繊細な坂本龍一のピアノ、松原正樹のジャジーなギター、そして達郎と美奈子の甘い声。
料理なんてものは、所詮、個人の舌の趣味でコロコロと評価がかわるものだろう。Aさんには甘くても、Bさんには苦いかもしれない。視覚効果を含めて、油やだしをいかに美味しく感じさせるか。付加価値としての会話や空間の雰囲気。差し出された料理に作り手の誇りと愛情があれば、やはり美味しい。
アラン・デュカスの料理本をまだ実行できずにいるが、自身で調理するなら、きっと最後の味見の際に、自分好みに味付けし直すに違いない。どんな場合も、表現はくさくなりますが、「愛」というスパイスには魔法があり、料理を一瞬にして三つ星に変えてしまう。
スタッフの諸君。「オーナー、ばっかりいいなー」と思わないでね。(笑)君たちにはまだ時間というものがふんだんにあり、チャンスはいくらでもある。私も君たちくらいの時は、バブルの時代で、いつもまわりを羨んだ時期もあったのさ。すぐに食えるようなる。かならずなる。家族や仲間を大切にして、やり続けることだよ。
□■□ ANTENNE □■□
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