路上のソリスト

チェロの紡ぎだす音域は、人間の声のそれに1番近いという。アコースティクの弦の響きは、運指のたびに軋むような味わいのある音の揺れを生み、脳の奥を刺激する。

路上生活者、ホームレスの奏でる2弦だけのバイオリンのメロディに、心惹かれるなんてことがあるだろうか。しかし、この映画は実話をもとにしたものなんです。

■離婚後、人生に行き詰まっていたLAタイムズのコラムニスト、スティーヴ・ロペス。ある日彼は、2弦しかないバイオリンで美しい音色を奏でるホームレスの男とめぐり会う。ナサニエル・エアーズと名乗るその男が名門ジュリアード音楽院に通っていたと知り、俄然興味を抱く。久々に記者魂に火のついたロペスは、ナサニエルの人生の謎を追って取材を開始し、少しずつ彼の生い立ちを紐解いていく。路上の天才音楽家ナサニエルを紹介した彼のコラムは大きな反響を呼び、連載を続けることにしたロペスはさらなる取材を重ねる中で、次第にナサニエルをなんとかして救いたいと願うようになるのだが…。

のだめカンタービレや、ロードショー予定の「オーケストラ」http://orchestra.gaga.ne.jp/#/mainなど、クラッシックを題材にした映画が多いのは、世界的な傾向であろうか。デジタル化が進む中、アナログに憧れを感じる人が多いのかもしれない。映画は、二人の主演の演技力がすべてのような。主演は「Ray/レイ」のジェイミー・フォックスと「アイアンマン」のロバート・ダウニー・Jr。

賛否は分かれるところでしょうが、ロバート・ダウニー・Jrが、再びチェロを手にして弾き終えた瞬間の表情は素晴らしかったです。

好きなことで身を立てたい人には、観ていただきたい。グッとくると思いますよ。