見知らぬ街に身を置き、当たり前と思っていたことが、当たり前ではないことに気づく。
創業してから32年。
ベトナム、タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、台湾など東南アジアが主でしたが、たくさん利益が出た年にはアメリカ・ハワイ、そしてイタリア・ローマやスペイン・バルセロナなどヨーロッパにも足を伸ばした。他の国に赴き、外から日本を見直す。勤勉で謙虚な国民性、東西に長く、変化に飛んだ四季と自然に恵まれた国土、清潔で安全な環境。不透明で先々の閉塞感に苛まれて、夢が持てずにいる若者たちに日本の素晴らしさを再確認してもらい、たまたまこの豊かな国に生まれたことの幸運、たくさんのチャンスに恵まれていることを理解して欲しいという想いは今も変らない。旅行での収穫は、世界遺産や美術館など、美しく整備観光地を巡ることも素晴らしい体験ですが、なにより現地での衣食住全般、現地の人々の暮らしを知ることを課題として挙げてきました。さて、NYに話しを戻しましょう。
ニューヨークの名所といえば、自由の女神、タイムズスクエア、MoMA(ニューヨーク近代美術館)、メトロポリタン美術館、セントラル・パーク、アメリカ自然史博物館、マンハッタンブリッジなどなど快挙にいとまがないですが、特におすすめしたいのは、グランドセントラルステーション。毎朝、メトロノース鉄道のハーツデイル駅から30分ほどかけてグランドセントラルセントラル駅まで通勤して何度も訪れた思い入れのある場所です。
パークアベニューと42thのクロスする場所にある。43thを越えたパークアベニュー側見ると、その外観は威風堂々として聳え立ち、元々はパンナムのロロゴマークを冠していました。いまはメットライフの文字がビルの上段に燦然と輝いています。航空会社から保険会社へ。時代の移り変わりを感じます。
グランドセントラル駅は、アメリカの素晴らしい建築的偉業の一つですが、非公式ながら定番の待ち合わせ場所となっています。渋谷のハチ公前などとは趣が異なり、天井高のある空間に彩られた特別な開放感があります。ちなみに東京駅と姉妹駅だそうですが、悲しいかなその荘厳さは比較になりません。
コロナ禍のもとでなければ、友人や恋人との待ち合わせに、毎日数千人の人がメインコンコースのインフォメーションブースの4方向に文字盤のある四面時計 (Main Concourse Information Booth Clock) を利用していることでしょう。時計の文字盤はオパール製で、2000万ドルの価値があるとのこと。「時計台の下で会いましょう」がニューヨーク市民の合言葉として、どれほどたくさんのドラマを演出してきたことか。私も住んでいる間に一度は、ワクワクするような素敵な待ち合わせがしたいと願っていましたが・・残念なことに果たせずでした。
天井は、淡いブルーの下地に12の星座が金箔で描かれ、2500個もの星が描かれています。そのうちの59個がLEDの電球が輝いて夜空を表現。その荘厳で幾多のロマンを感じさせる空間は、歴史的価値も含めNYを代表する建築物です。ニューヨークから北や西の方面に続くメトロノース鉄道の起点であり、地下鉄やバスにも簡単にアクセス出来ます。
何番のホームに行けば、ホワイトプレイン行きの列車に乗れるのか分からずに何度、入り組んだ通路で迷ったことでしょう。それほどホームの数が多く、通路が複雑なのです。
昔ながらの窓口で紙の切符を買い、電光掲示板の時刻の行き先の列車の番号を確認し、複雑に入り組んだ階段を、幾度となく駆け上がって、シルバーにブルーのコントラストが美しい列車に滑り込んだ記憶が蘇ります。数両の車両ごとに車掌がおり、切符を切りに来てシートの上に挟んでいきます。このアナログさに、最初は戸惑いましたが、駅員の生活を守り続けている貴重なシステムなのだなと気付きました。
駅構内には、市場をはじめとしてかなりの数のショップがあります。屋台のような小さな売店から、アップルストアやティファニーなどの有名ブランドショップも軒を連ねています。東側にあるアップルストアのEASTバルコニーから後ろを振り返ると、高い天井、広がる空間、巨大なアメリカ星条旗の掲げられた壁面、行き交う人々の多さに圧倒されます。
レキシントン通りから市場に入ると、左右にパン屋と花屋、果物屋と肉屋のようにお店が連なり、見ているだけで、ワクワク楽しくなります。魚屋の店先には、まるでブティックのように、氷で作られた棚に、色とりどり美しく並べられた魚の切り身が並んでいたり、香辛料や木の実、チーズの専門店など日本では見かけないお店も多数。香ばしいバケット、上質なプロシュート(生ハム)、ワインを買ってウキウキ気分で家路を急ぐ。そんな人たちを横目で見ながら、「プラダを着た悪魔」や「セックス・アンド・ザ・シティ」のドラマのワンシーンを思い出すのです。
機会をみて、NY郊外の高級住宅地にあるアメリカンな巨大スーパーマーケットや、日本の食材が揃う日本人経営のマーケットなど、スカースデイルやハーツデイルでの生活についても書かせていただくつもりです。