無駄遣いをなくして、小さな政府をは大切なことですが、すべてにそれを適用することにはいささかの違和感を感じずにはおれません。
司法修習生に支払われていた給与を、カットする法案が実行されようとしています。
南口のサロンを開店して間もないころに、ある司法修習生のお客様がおいででした。難関の司法試験に合格し、弁護士、検事、判事のいずれに進むのか考えておられるころでした。
仮にAさんとしましょう。Aさんが当時におっしゃられていたことで印象に残っている話を書いてみたいと思います。
学生時代には仲間と炉端などの安い居酒屋なんかで飲んでいたのに、修習生になり神戸の地方裁判所で研修が始まると先輩の検事の方々に飲みに連れていかれると、横にキレイなお姉さんがお酌をして下さるような高級なところへ。わけもわからずどきどきしたそうです。
修習生同士で、事件を担当するそうなんですが、「この事件調べが足りないから、県警の方に調べなおしてもらおうよ」ということで兵庫県警に電話すると、自分のお祖父さんくらいのたたき上げの刑事の方が飛んできて、「至急、全力で調べなおします」と直立不動で対応してくださったそうです。
そのときに、社会の厳しさと普段は気づかずにいる見えない社会のルールを実感したとおっしゃっておられたのをはっきりと覚えています。
幼いころから、勉強に明け暮れ、超難関の司法試験に東大在学中に合格。エリート街道まっしぐらの方でしたが、それから何年後かに東京からサロンに来てくださったときには、企業がクライアントの外資系弁護士事務所に勤務され、アメリカの弁護士資格も取得し、一段と立派になっておられました。
「今度、アンダーソン法律事務所には無理を言って休みをもらい、しばらく海外に行ってきます」
「どこの国にいかれるんですか?」とバカンスにでも行くのかなと尋ねた私に。
「バルト三国に行って、無給で世界銀行の設立を手助けしてきます」と
そのときに、あまりの立ち居地の違いに愕然としました。当時、毎日の仕事に追われ、生活するのに精一杯の私には、その志の高さに自分自身が恥ずかしくなったのを覚えています。すべてとは申しませんが、このAさんような方々の、雪かきのような善意の行いで世界は成り立っているのだと。
Aさんは、特に優秀な方であり、おうちも裕福で経済的には恵まれておいででしたが、現在、司法試験に合格するには、何年も勉強し、合格後も身の振り方が決まるまで経済的には恵まれないそうです。バイトをしながら、司法修習生というのも無理がある。多くの方が奨学金で苦学し、弁護士として一人前になるまでに1千万円以上の奨学金で借金を背負ってしまう方も多いそうです。
裕福なご家庭からだけでなく、庶民からも、司法に携わる人を世に出すために、修習生の間は給与を国が援助し、手助けしてあげるべきだと私は思うのですが。
みなさんはどう思われますか。