天狗は森の中

深夜、雨がしのつくボルネオの空港に着く。バスで移動。
愛嬌の良いカシミールくんという中国人のガイドが案内してくださる。

2人ずつにわかれて各部屋へ。
旅行会社とホテルのご好意で私だけスイートを用意してくださっていた。
しかし、みんなに申し訳ない。

部屋は快適。ジャグジー付で二部屋続き。熱いお湯に身をゆだね明日からの計画を練る。そして睡魔が。

東南アジア独特のじっとりとした雨はあがり、なんとか曇りの空の合間に太陽が覗く2日目。2時間、車を飛ばしてブルネイとの国境近くの川まで走る。
7から8人でボートに乗り込み、上流を目指す。
マングローブの林がジャングルに変わるころ、ボートが急に向きを変えた。

いた!テングザルである。(木の先端にいるのがそう)

 

天狗のように鼻が尖り、音に反応してすばやく木に登ったり、茂みに隠れる。
数等の群れで生活していて、木の実を食べている。
尻尾が長く、愛嬌のある動きだ。

次の群れを求め、ボートはさらに上流へ。出発場所あたりは海水が濃いそうで、だんだん淡水に近づくわけです。顔に風がモロに当たり、まるでバイクで疾走する感じ。だんだんつらくなるが、貴重な時間を無駄には出来ない。水面には、カワセミや白鷺や野生の鳥達もたくさんいる。

今回の旅行のテーマは「野生」。

今は亡き川口ヒロシ隊長のような意気込みです(笑い)
飛行機で移動し、野生のオランウータンを観るツアーもあったが、高額で実現できず。
次に来ることがあれば、実現したいものだ。

とっ、突然、ボートが急転。岸を目指す。

「カニクイザル!」ガイドのジョーさんが叫ぶ。
「クオー、クオー」
ジョーさんが猿たちを呼び寄せようと口真似をして泣き声を試みるが、どこかにいってしまう。

3回ほどテングザルの群れに遭遇して、かなり上流にて反転。
あたりが暗くなり始めると、今度は蛍。

この地方にしか生息していない小さな蛍で、1年中毎日光っている。
木に無数にいるため、その木はチカチカと点滅する天然のクリマスツリーのようになる。
不思議な光景。ボートに迷い込んできたものをジョーさんが帽子ですくう。
さすがに小さい。日本のゲンジボタルやヒメボタルよりもはるかにミニ。

真っ暗になったので、キャンプへ戻り、食事。
香港より参加のご夫婦(川西市にお家がある。世間は狭い)と仲良く歓談。

カレーとミーゴレン。そして、スイカ、パパイヤなどの果物。ミーゴレンは辛い焼きソバ。東南アジアはどこも、ナイゴレンかミーゴレン。さすがに飽きてくる。日本人は贅沢だ。すまない。

また車に揺られ2時間。ホテルにもどるとみんなそれぞれにラフティングへでかけたり、シュノーケリングしたり、ウエイクボードなどで楽しんでいたようだ。
いまのところ無事故。ほっとする。

部屋へ戻り、内田樹先生の本を読む。「村上春樹にご用心」
おもしろい。旅先での読書のなんと幸せなことか。

そして深い眠りが・・。(続く)

■テングザル  オスは西洋ナシのような鼻をしており、鼻にかかった声を出す。メスの鼻は小さい。水浴を好む。河岸の高い木をねぐらにし、早朝、日の出とともに木をゆすり、跳躍して移動する。マングローブの葉を主食とし、繊維質を消化するためにウシのような胃袋をもっている。