芦屋のサロンでお仕事。
サロン前の交差点に信号待ちしている一台のクルマが、目に止まる。
おおっ、シルバーメタリックのポルシェ356。
映画「48時間」の中でエディ・マーフィーが、留置場にいる間、駐車場に預けたままにしていたポルシェ356に火を入れるシーンが脳裏に蘇る。かたわらで、そのかっこよさにたじろぐニック・ノルティの横顔。
水平対向エンジン・フラット4。独特なエキゾーストノート。空冷なので、バタバタと少しエンジン音はうるさいけれど、どこか愛嬌があって愛くるしい。その柔らかに流れる独特のフォルムに憧れて何年経つであろう。
10年ほど前、BMW2002というマルーンの古い車を所有していた。レストア車を所有するということは、それなりの責任と決意が求められる。
冬場、祈るようにキーを回す瞬間の緊張感。外気温に左右されるデリケートなエンジンや、アシストのない重いハンドル、レストア塗装を始めとして度々のメインテナンスなどを全て含めて、友として、恋人として、家族として愛し続けることが要求されるのだ。
数秒後、シグナルが変わり軽やかな排気音を響かせて、左折して通りの向こうへ。
「憧れは遠くにありて想うもの・・」なのか。
学生時代、オレンジ色のビートルとともに過ごした。あのドイツ車特有のガソリンと藁のようなココスマットの匂いが、妙に懐かしいのだ。
いつも、お読みいただき感謝しています。