忘れえぬ味

みなさんは、生まれてから何回ぐらい食事をされたであろうか?

何かに夢中になり食べるのも忘れたことや、風邪で寝込んで食べれなかったり、貧しくて食べ物自体見当たらない時もあったりで、だいたいになるであろうが、私の場合5万5千回以上になると思う。すごい数字である。

あと何回くらい、うまい食事ができるのかと思うと、1回、1回を大切にして食べなきゃなあとあらためて思うわけだが、お腹の空いているときはそんなことは忘れて、ただただ食べることに専念してしまうしね。困ったものだ。

記憶に残る食事は?と聞かれて即座に答えられるものは、悲しいかな不思議にあまりない。でも、記憶に残る味はある。舌が覚えている。

 

幼いころ、酒のみであった父親が、飲んで遅くなったいい訳か、手土産で持って帰ってきたワサビの効いたかっぱ巻きの突き抜けた大人の味。泣けた。

 

林間学校で、クラスのみんなと初めての飯盒炊爨で食べた、炊きたてのおこげの味。プロセスを含め、うまかったなぁ。

 

友人宅で、思いがけず夕食をよばれて、勧められて食べたふきのとうの佃煮の苦〜い味。初めて体験した味であった。苦みを初めて美味しいと感じた。大人になったと当時は錯覚した。

 

大人になったといえば、初めて彼女と一夜を過ごして、次の朝に食べたトーストの味とか・・詳細はここでは述べないが(笑)

 

念願であったイタリア旅行、迷路のような街を地図を頼りに探し当てたベネチアの「ハリーズ・バー」。そこが発祥の地である、牛肉のカルパッチョとカクテルのベリーニを無理して食べた。その当時に出来る限りのおしゃれをし、さして広いともいえない2階のテーブルの隅、アラブの大富豪と思しき家族や、映画関係者と女優(ベネチア映画祭のあとだった)なんかに囲まれて、まさに超おのぼりさん。緊張して、無理やりへらへらと笑いながら口に運んだっけ。不思議だが、東洋人としての劣等感はなかった。自分とは関係ない世界の出来事を、映画を鑑賞するごとくに見ていたからだろう。ただ、コミュニケーションがとれぬ悲しさと、はがゆさを噛みしめていた。

 

 

命の糧である食事を、ありがたく、大切に、噛みしめて食べなくては。あと何回くらい、経験したことのない味に出会えるだろう。

できれば、忘れえぬ仲間と、記憶に残る食事を、出来る限りたくさん楽しみたいものですね。

 

 

 

 

 

 ■ハリーズ・バー  ハリーズ・バーは1931年5月13日に開店。以来、ヘミングウェイをはじめとした多くの芸術家やオーソン・ウェルズとパオーラ・モーリ夫妻ら俳優、デザイナーなどさまざまな有名人、名だたる大富豪たち、そしてエリザベス女王までが訪れたという、まさに伝説のレストランバー。

 

 

■□■ ANTENNE □■□

芦屋店 Au Bricoleur 「オ・ブリコルール」

TEL 0797 35 1121

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芦屋市大桝町2−12 クオリア三正1F

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