運動靴と赤い金魚 鑑賞

月曜日、内田樹先生の凱風館のハブのひとつ、ジュリ―部から派生したシネマ部の会。ツキイチ、メンバー持ち回りで、プロジェクター100インチスクリーンの画面で、問題作を鑑賞する会です。

 

 

甲南合気会の助教のおひとりであるI上さんの担当にて、イラン映画「運動靴と赤い金魚」を鑑賞しました。DVDの表題をみて、イラン映画であることを確認。これは涙腺が、麻痺しそうだなと、直感的に。実際には、チャン・イーモア監督の作品などとはちがって、ボロボロに泣けるという感じではありません。

主人公のアリ少年はある日、お使いに出かけた先で妹の靴をなくしてしまいます。貧しさゆえに、両親に失くしたことを言えないアリは妹と相談して交代で靴を履くことを決めるのです。それからというもの、アリは待ち合わせ場所でザーラから靴を受け取っては学校に遅刻ギリギリで駆け込む毎日。 はたして、靴は・・。助け合い、寄り添って暮らす家族の物語です。

 

 

兄と妹、そして、頑固なお父さんの心理描写と、日常の生活の機微で、馴染みのないイランの生活や現実が垣間見れる作品です。一般的にイランといえば、ザクロをたくさん食べるだとか、イスラムのコーランの教えにそった断食の存在とか、女性に教育を許さない社会、中東での、核兵器製造疑惑、東京の繁華街にたむろするイラン人犯罪グループみたいな、あまり善いイメージがなかったのです。が、この映画をみて、認識が少し改まりました。

 

 

やはり、同じ人間。文化や宗教にかかわらず、親子、兄弟の家族愛に関して、底に流れる潮流は、全世界、同じであると。

イランでは情報統制が厳しく、表現の自由がないようです。マジッド・マシディ監督が子供を主人公に映画を撮られた理由。子供向けの教育映画ということにすれば、多少は自由がきくからにちがいありません。原理主義に代表される、旧世代の価値観を、アリの父親が象徴しており、それにとらわれないアリやザーラのような子供たちが、イランの明るい未来を象徴している気がします。

アリは、参加が締め切られていたマラソン大会への出場を、体育の先生に泣きながら懇願します。ですが、結果は、獲りたかった3位にはなれません。

 

人生は全てが自分の思い通りにはならないけれど、がんばった努力は決して無駄ではなくて、いつか夢はかなう

ラストシーンで、池のほとりに座って、マラソンで疲れた足を冷やす少年。周りに寄って、足をつつく赤い金魚たちは頑張ったアリを癒し、祝福しているかのようです。

夜には父から靴が兄妹にプレゼントされることでしょう。アリが妹に結果を報告するシーンの直前、ちらっと映される父の自転車の荷台に2人分の靴が…。

 

お子さんが、わがままを言ってぐずったり、スネたりした夜に、ご家族全員でご覧ください。

 

 

 

 ◆参考

・イランはイスラム教に従った生活が求められる政教一致の社会。

・学校でも男女別の授業が徹底していて、女子は午前、男子は午後から授業。また、赤い金魚はイランの正月のお祝い物。正月が過ぎるとそのまま家で飼う家庭が多い そう。
 
・砂糖はモスクで使われる宗教物で、キリスト教の聖餅にあたるようなもの。アリの父はこの砂糖をまとめて預かる任にあるようです。
 
・イランの女の子はあの幼い年齢でもパンプスに近い形の靴を好んで履くようです。スニーカーは男の子の履物で貧しい家庭にはとても高価なようです。

 

◆『運動靴と赤い金魚』(うんどうぐつとあかいきんぎょ

 

ペルシア語: بچه‌های آسمان英語: Children of Heaven) は、1997年イラン映画モントリオール世界映画祭でグランプリを含む4部門を受賞、第71回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

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【映画データ】
運動靴と赤い金魚
1997年・イラン

モントリオール国際映画祭グランプリ他3部門受賞
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

監督 マジッド・マシディ
主演 ミル・ファロク・ハシェミアン,バハレ・セッデキ,アミル・ナージ