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斎藤茂太氏の文章のなかに、戦時中、食糧もそろわない時代に軍医をされていた頃、患者の中に豆腐屋の方がいて、配給の大豆で作ってくれた豆腐が言葉で言い表せないほどおいしかったと書かれていた。つるんと口に入った感触がいまだに忘れられないと。

今の時代なら、「国内産の北海道のどこそこの農場の誰が、生産した最高の大豆を使用、天然水を使用して安心安全のうちに、こだわりの製法で最高の食感を追求しました」などと謳い文句がはいるところ。

ものが揃わない貧しい時代であるからこそ、味わえた美味しさだろう。

欲求や願望をいつも百パーセント満たしたいと願う「もっともっと」が強いと折れる。現実には満たされることがないだけに、不満は蓄積していつか破裂する。

あれもこれもと求め続けても、欲望の完璧な達成などきりがない。これだけ手に入れていれば、じゅうぶん幸せと感じるようにしなきゃなあと。それができたときに、自分だけでなく、周りの人たちも穏やかな気持ちにさせられると。

もっともっとは、禁句。腹八分目、ニコニコして笑う心境を目指していきたいものですね。