玄斎へ

神戸というところは、エトランジェの街で、異国の文化が根付いているせいか、和食のうまいお店に出くわしたことがなかった。私が知らないだけだろうとは思うのだが。

少し前になるけれど、お知り合いと夕食へ。雨の夜で、車は中山手通りを走り、県庁を抜けてから、さらに山手へ少し。わかりにくい、聞いていてもなかなか行き着けない場所に、料理屋「玄斎」はひっそりとあった。

中に入ってびっくり。スーツ姿の社用族がたくさん。女性客も数名。三角のカウンターと、奥にひと部屋。ほぼ満席。

後で知ったのだが、大将は大阪の老舗の浪花割烹 喜川 (きがわ)の次男坊の方のお店らしい。

先付けは、子鮎の和え物や、タコの手まり寿司、ぬた、季節の春野菜の天ぷらなど。出汁の取り方が本物。味付けがクリアでえぐみがない。

  

お刺身で、アナゴは初めてだった。鱧のように骨切りしてあるのか、骨抜きしてあるのか、脂の乗ったアナゴを堪能。アナゴが、こんなに濃厚な味だとは知らなかった。イカとヨコワも美味。

山芋の練り物が沈んだ汁椀。色彩も美しく、椀の花模様がそれを後押しする。白、赤、緑の妙。

スズキの焼き物。脂ののりがこれまた素晴らしい。添えてあるトマトが甘いのだ!

菜の花の炊き込み御飯と赤出汁、香の物。味も量もバランスが美しい。

  

最後に別腹の甘いもの。イチゴ、ジェラード、小豆。

厳選された素材。器も含め、よく練りに練られた内容でした。

よく書かせていただいている焼き通し「かいや」の七代目の話によると、神戸市の機関誌の取材を受けた際に、とりまとめ役を玄斎のご主人がされていたそうです。たいへん穏やかな人だったと。

三宮にでられた際には、一度。

良い仕事をされておいででした。

 

 

◆ 玄斎   http://www.gensai-kobe.jp/

〒650-0004
兵庫県神戸市中央区中山手通7-5-15 サンパレスとよふく1F
078-351-3585