大統領の執事の涙

医師は、病気を治すことを生業とするが、病気がなくなれば仕事が無くなる。警官も犯罪を無くそうと日夜、努力を続けるが、犯罪者がひとりもいなくなれば転職を余儀なくされるだろう。この世界には不条理な矛盾で溢れている。


実際にそうなることは考えにくいとしても・・。

この映画の主人公も、そんなダブル・バインドの数奇な運命を辿ります。

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黒人差別のまっただ中の南部に生まれ、白人に父を殺され、母を廃人にされた黒人少年セシル・ゲインズが、ふとした運命からハウス・ニガーの道へ。努力を重ねて、ホテル勤めからホワイトハウスへと転身。

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空気のような存在となることを義務づけられ、ホワイトハウスで「見ざる、聞かざる」を基本とする大統領の執事を、7名の大統領相手に長年勤め抜いた黒人の一生を描いた作品です。

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どこがダブルバインドかといいますと、執事の息子が、黒人解放運動に明け暮れ、苦労の末入学させた大学も中退。最後には政界へと転身していくという。

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白人側として運動を鎮圧に回る大統領に、「君の息子は、黒人解放運動に参加して刑務所にいる」と告げられるシーンなど、父親として顔と、任務に忠実な執事の顔の「Tow Faces」をもつというセシルの苦悩の表情は圧巻。解放運動の歴史と白人による迫害は、目を覆いたくなるシーンも多数。

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アメリカの闇を描いた作品は数ありますが、同時に家族との絆を平行して描きつつ、不断の血塗られた努力と犠牲のうえに、現在のアメリカがあることを、再度、考えさせられました。

歴代の大統領を、先頃亡くなられたロビン・ウィリアムズ(アイク)、そして、J・マースデン(J・F・ケネディ)、リーブ・シュレイバー(ジョンソン)、ジョン・キューザック(ニクソン)、アラン・リックマン(レーガン)と、名優が脇を固めている点も見所。

黒人版「フォレスト・ガンプ」とも言えそうですが、その味わいは異なるもの。黄色人種である我々にも、西洋社会ではいまだに存在する事実であることも噛み締めたいと思いました。


 

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