やっぱり蕎麦

温かくなると、ホットコーヒーからアイスコーヒーへのシフトが始まると同じく、食べるものの嗜好も。

 

ツルツルと流し込む、のど越しの感覚が恋しくて、桜でにぎわう夙川の「馳走侘介」へ。

 

扉を開けると、待っている方がおられ、いつもは静かな店内が慌ただしい。やはり花見シーズンだからか。

 

 

 

 

 

しばらく待って、靴を脱ぎ、奥のテーブル席へ。お客様で一番目につくのは、やはり年配の男性。蕎麦は、やはり男性の食するものなのか・・。

映画監督・小津安二郎の映画のごとく、江戸前の砂場か藪あたりで、夕刻決まった時間に近所の旦那衆が、いたわさに日本酒、せいろを一枚ツルリとやって帰っていくみたいな。

 

 

 

 

 

すっかり老舗の趣、芦屋の「土山人」から独立されたここの蕎麦は、やはり本格派。

 

 

 

 

 

せいろでも、細挽きの白い蕎麦と、皮が入ってやや黒みの田舎蕎麦がある。日本酒にぴったりの季節のメニューも豊富。

コースの会席や花見膳もあるが、いつものようにアラカルトで。

かぶらのすり込んである、柔らかな風味の出汁の「かぶら蕎麦」を。

 

 

 

かぶらの葉と柚子の皮。

じんわりと五臓六腑に染みてくる。

 

「辛み大根蕎麦」。細挽きの蕎麦に、ピリリと大根の辛みを合わせつついただくと、ワサビとは一線を画し、脳天を刺激する味わい。

 

 

 

 

追加で名物の太巻きを半分いただく。

 

 

 

 

 

 

しっかりと焼かれた厚焼きの卵焼きに焼いた穴子。

しっかりとした海苔と紫蘇の香りがツンと。下手な鮨屋を凌駕する味。

 

これから冷たい麺類がますます恋しくなりそうな予感。

 

表へ出ると、月が夙川教会の尖ったゴシック屋根の上に。

 

春の夜は、まだ宵の口。