結果がどうあれ、決着がついた瞬間に、魔法は解けてしまうのだ。
定年を迎え、会社を去った男性は、途端に目標を失い、やる気をなくし、自暴自棄になったりするという話をよく聞く。
それほどに仕事というものは刺激的で、人に活力を与える力を持っているのだろう。
その成功によって得られる報酬がどうあれ、それに向かっている間のプロセスが、ランナーズ・ハイのように、人を魅了する。
そんな魔力に魅了された男たちの物語を、観ました。 映画「黄金を抱いて翔べ」です。
彼らの、目指すものは、金庫に眠る240億の金塊。
登場する男たちは、様々な社会的背景と、しがらみを抱えていますが、不思議なことに、手に入れた金で「こうしたい、ああしたい」の話はほとんど出てきません。次々に目の前に立ちはだかる障害をクリアし、不可能を可能に変えること。「欲」よりも「達成感」へと、彼らのベクトルはどんどんエスカレートしていきます。
つまり、当然のことながら行動の起爆剤となるものは、つねに「感情」が大きく支配しているということにほかなりません。
原作の素晴らしさもさることながら、井筒和幸監督はじめ、出演者の妻夫木聡、浅野忠信、桐谷健太、溝端淳平、チャンミン、西田敏行の俳優陣の演技も秀逸。
劇中、悲惨なトラブルに見舞われても、それほど悲壮感を感じない。
かつ、けっこうな長尺ですが、ダレルことなく一気に見せてくれます。
このご時世、ついつい夢を見失いつつある方々には、刺激的な起爆剤になりえる作品かと。
◆「黄金を抱いて翔べ」
1990年に発表された高村薫のデビュー小説を「パッチギ!」「ヒーローショー」の井筒和幸監督で映画化したクライム・サスペンス。銀行の地下に眠る240億円の金塊を強奪するために結集した6人の熱き男たちの運命をパワフルに描き出す。出演は妻夫木聡、浅野忠信、桐谷健太、溝端淳平、チャンミン、西田敏行。
過激派や犯罪者相手に調達屋をしている幸田は、学生時代からの友人・北川浩二から大手銀行本店地下にある240億円の金塊強奪計画を持ちかけられる。やがて北川は、計画に必要なエキスパートを次々とスカウトし、総勢6名の強奪チームを結成する。こうしてあまりにも大胆不敵な金塊強奪計画がスタートするが、そんな彼らの前にはいくつもの障害が立ちはだかり…。
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