スパゲティとパスタの間にあるもの

村上春樹の小説「ねじ巻きクロニクル」の冒頭で、主人公がスパゲティを茹でている最中に、電話がかかってくる。

 

 

 

 

 

 

 

タイミングの悪いときを狙いすましたように電話をかけてきたり、相談を持ちかけてきたりする人が少なからずこの世には存在する。

ハンドルを握って混んでいる道を走っている最中に、呼び出し音が鳴り、スマホに手を伸ばしかけて助手席を見ると、外に白バイのおまわりさんが併走しているとか・・ね。

そういう御仁に限って、ご本人にはそんな意識は毛頭ないのが困ったもの。「ねぎ巻きクロニクル」の僕は、幸いにして直前で事なきを得るが、それでも茹で上がったパスタはズルズルノビノビとまではいかないものの、厳密にはアルデンテとは言いがたいものになる。

 

 

 

嚙んだとき、歯にしっかりとした弾力と、うっすら芯の存在を感じさせる茹で加減がパスタには重要。フライパンでソースに絡め、温めた皿に移してテーブルに移動させる時間を考慮に入れねば、美味しいパスタは味わっていただけない。そこまでやると、すぐに食べて欲しいしね。

 

 

 

 

これも、目的のパスタがタカノツメとニンニクの効いたペペロンチーノなのか、トマトの酸味と魚介のペスカトーレなのか、アサリの旨みと白ワインの香りが匂いたつボンゴレなのか、はたまたペンネなのか生パスタなのかで、レシピで標準茹で時間から1〜3分は引き算して火を止めるわけですが・・。

 

ここまで書いておきながら、お弁当の端にひっそり佇む冷えたケチャップ味のスパゲティも好きだったりします。

 

そういえば学生の頃、アルバイトで喫茶店のマスターもどきをさせていただいた時期があった。

仕込みの段階で、その日に売れそうな量のパスタを固めに茹でて金属製のざるに入れて冷蔵庫に保存していた。オーダーがあると、フライパンに二つ切りのソーセージ、玉ねぎ、ピーマンをケチャップとバターで炒めて、楕円で鉄製の鉄板を熱く熱した上に投入。鉄板の周りに出来た隙間に牛乳で溶いた卵を流しいれたナポリタンが名物のお店でした。熱い鉄板の熱に焼かれ、スパゲティが固く、ぱりぱりとした感じになる。

甘い半熟の卵とケチャップ味の固い麵。これが美味しかった!

 

これって自身のよき時代への憧憬?

だとしても、当時はご馳走だったあの味が忘れられないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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