ヘア・デザイン考 2 再現性編

みなさんは、サロンで鏡を見せられ、「いい感じ!」と喜んで家に戻り、一度シャンプーして、自分で乾かしたら、どうにも収まらないというご経験がおありではありませんか?




 

 

 

ドアを開け、サロンにお越しいただき、ドアを開いて外に出るまでは、ほぼ完璧な状態で送り出せるよう、持てる技術を駆使して、神経を尖らせるのが美容師。

 

 

しかし、どんなに美しくメイクし、セットアップされたスタイルも、ドアを開けた瞬間に突風が吹きつけ、1枚、1枚、規則正しく倒れるはずのドミノが、何十枚も、様々な方向に蹴散らされてしまうがごとく、無残な姿に変化する事もあり得ます。一晩、枕に押し付けた後、次の朝に完璧なスタイルということは有り得ません。

 

その日、一日だけでなく、次の日、そのまた次の日もご自宅でシャンプーされ、濡れて崩れた髪を、ご自身でドライされる。仮にカットの周期が1ヶ月として、残りの29日の間、ご自宅で簡単に再現できなければ、再びドアを開けてはくださらなくなる。



デザインとスタイルの再現性は、別のラインで考える必要があります。





 

その昔、ブローが一般的でない時代には、ローションをつけ、カーラーで髪を巻き、オカマと呼ばれたドーム型のドライヤーに入れられてカチカチに固めた頭を、1週間ほどもたせるのが一般的であった時期があります。

その後、指で挟んで引き出した髪のパネルを展開図をもとにしてカットをすることと、ブラシを使うブローという技術が普及していきます。それでも、毛流れを作り、ヘアスプレーでカチカチに固めてしまうという時期を経て、この15年くらいで自然に髪の毛が動くことを許す、ナチュラル・ブローのという考え方が定着してきました。

 

洗った後、タダ髪を乾かしただけでスタイルになる。ナチュラル・スタイルという概念への移行。

 

頭という球体にほぼ垂直に生えた髪の毛は、地球の引力に引かれ、その髪の性質(太さ、弾力、カール)と相談して、本来、落ち着くべき場所に落ち着こうとします。



 



過去において、われわれ美容師はドライヤーの熱とロールブラシなどにより、作りたいスタイルへと髪の毛を強制的に一定方向へ向かわせていく”コンサバ”あるいは”クラシカル”なスタイル(現在でも、フォーマルな結婚式やパーティなどの場ではおこなわれる)を当たり前のように行ってきました。

 

でも、おそろしくスピーディかつ時間が貴重な現代、それでは満足していただけない。ワックスやムースやスプレーを使うことなく、ただドライしただけでもスタイルになるデザインでなければ勝負になりません。

 

それには、クセ、生え方を考えたうえで、髪が収まりたがっているところに治めてあげることが不可欠です。

 

その答えが、ドライカットです。

 

髪の弾力、生えクセと引力で、自然に乾いた際に収まる場所でカットする。展開図で、デザイン通りに引き出しカットする瞬間に、髪が収まりたがっている方向や位置を考えて、切る位置をズラしてやることが必要なのです。さらに、言うならば指で挟んだパネルではなく、少しずつの束・ピースで切ることが求められます。


つまり頭皮の上で、指の指紋と同じように模様を描いて落ちていく髪の毛を3Dプリンターでスキャンして輪切りにした断面を積み重ねるようにカットする必要があるのです。

 

 

 

難しい技術論を持ち出すつもりはありません。誤解されませんよう。

 


料理は、その材料の話や、調理法や歴史などは、その料理を口に運ぶゲストの方に、本来、関係も関心もない。

ただ美味しければ、問題ない。


大切なことは、担当の美容師が髪の生え癖まで診てくれているかをしっかりと見定めることです。






カウンセリングの段階で、神懸かった占い師のように「カットした後、いつも、右の前の方がすぐに重くなってきません?』、「伸びてこられると、トップの左側にボリュームが足らなくなって困っていませんか?」と、あなたの悩みをズバリ的中で事前に指摘してくれるスタイリストなら、おそらく大丈夫でしょう。


くわえて、自宅でもスタイルを再現できるように、「洗い方」、「乾かし方」のレクチャーを細かくアドバイスしてくれるかどうか。これは大切な判断材料です。


シャンプーは、地肌だけを洗う(毛先は、数ヶ月前に生まれ、何回も洗う、乾かすを続けてダメージしているから)。毛先をゴシゴシはいけません。


トリートメントは、毛先を中心に塗布する。生まれたてのダメージレスな根元につける必要はありません。ボリュームが出なくなったり、頭皮が痒くなる原因になります。


ドライヤーの熱で傷めるより、タオルをもう一枚用意して水分を出来るだけとりましょう。髪の表面を守るために、オイルを髪が濡れている段階で薄くまんべんなく。コームで梳くことをオススメします。オイルはキューティクルを、寝かせて薄く覆うことで保湿の効果を期待できるからです。


頭を下に向け、床を見る感じで、首の後ろ、耳の後ろ(乾きにくい箇所)からシェイキングしながら根元を起こすように乾かしましょう。そして天頂部へ。80%〜90%くらい乾いたら、バサッと今度は上、天井をみながら、パートを意識してドライ。


次のことを記憶にとどめておいてください。髪の毛がフィックスするのは乾く直前、最後の水分がなくなる瞬間です。そこでクーリング(ドライヤーを離して冷やす)する。これが最大の肝です。煮物料理は、火を止めた直後は美味しくない。冷える際に、煮汁を吸い上げることで味が良くなることと同じです。


お出かけや、パーティーで一日、スタイルをもたせたい場合は、セット剤を。ワックス、ムース、スプレー、それぞれに使い方があり、間違った使い方だと、本当にもったいないです。



さらに細かいアドバイスができますが、テキストでは限界がある。

ここから先は、その方の個体差がでます。サロンで、手取り足取り教えていただいてください。



それができないサロンは、NGです。



ざっと概要を書かせていただきましたが、理解が難しい箇所がおありになったかもしれません・・。


次回は、「賞味期限」について言及させていただこうと思います。


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いつも、お読みいただき、ありがとうございます。